NIPPON QUALITY Corporate Exhibitor

003
有限会社金照堂
 【佐賀】

Success Case Introduction
成功事例紹介

海外ならではの文化や思考を勉強し、
柔軟に変化し続けることで、未来を開く。
400年の歴史を持つ、磁器のまち・佐賀県有田町に、陶磁器の卸問屋として1961年に創業した「有限会社金照堂」。華やかな絵付けや、どっしりと構える存在感で食卓を演出する有田焼の中に、一際キラキラと目立つ器のシリーズ「麟 Lin」がありました。数年前まで海外の販路開拓は「ほとんど興味がなかった」という同社。様々な出会いや気づきを経て、生まれたこのシリーズは、カラーバリエーションを含めると今では130種以上にもなるといいます。有田焼の可能性と、未来を見据えて、新たな市場の開拓へと動き出しました様子を取材しました。

INTERVIEW

01 : Information

次の一歩を生み出す
アンテナを張り続け、
小さな気づきをキャッチする。

それこそ江戸時代ごろからすでに海外へ輸出していたという有田焼。しかし近年は価格面や文化の違いなどから、うまくいっていない様子を見て、「国内で商売するしかないと思っていました」と話すのは、「有限会社金照堂」の代表取締役、金子真次(かねこしんじ)さん。有田焼の卸問屋だったものの、既存の方法では売れなくなってきたことを感じ、十数年前からオリジナルの陶磁器作りにのり出します。そこで生まれた、「富士山ペアぐい呑」が2011年に観光庁の「魅力ある日本のみやげコンテスト」の韓国賞とイギリス賞に輝いた時ですら、海外のことは考えていませんでした。

「このぐい呑も結局は『インバウンド人気』で、ほとんどが国内で取引が完結するものばっかりでした」と金子さん。そんな中、2016年に有田焼が創業400年を迎えるため、佐賀県が海外に向けて本気で発信することを知ります。様々な商社や窯元がイタリアの「ミラノサローネ」や、フランスの「メゾン・エ・オブジェ」への出展を決める中、参加したいけれど海外で勝負できるものがない、一から作るにもそれなりにお金がかかってしまうため難しい、と、この大きな流れに乗れず諦めムード。けれども華やかに活動している他の商社や窯元を見て、「やはり私達も何かやりたい!」と、この県の海外に向けたプロジェクトに参加する方法 がないかと考えるようになりました。そんな折に、「海外で色鮮やかな南部鉄瓶が売れている」というニュースを目にします。そこで得た気づきをもとに、デザイナーや赤絵師と相談しながら、2015年に新ブランド「麟 Linシリーズ」を生み出しました。
上:鮮やかだけど、目立ちすぎない、「麟 Linシリーズ」のプラチナタンブラーは、ちょうどいい大きさと好評。
下:一つにしてしまうことができる、入れ子の酒器セット「麟 Linプラチナ旅酒器」。ちょっとしたお茶のシーンで重宝しそう。
02 : The Reason

固定概念にとらわれず、
海外への意識も、展開する商品の
ジャンルも変化していくを変える。

「麟 Lin」の試作ができた2015年6月、周囲の反応も上々なことから、名古屋で行われた陶磁器だけの見本市に持っていきました。ところが、なぜか誰も反応しない。「唯一、陶磁器のデザイナーさんが『すごくいいからメゾン・エ・オブジェに出しなよ』と言ってくれて勇気をもらいました」と当時を振り返ります。この経験を踏まえて、陶磁器関連ではないところにアプローチしてみようと同年9月に「ギフトショー」に出展。すると、打って変わってすごく注目されました。時同じくして、有田焼400年プロジェクトの中でアメリカ事業が後発でスタートすることになり、そこで満を持して金子さんも手をあげます。アメリカの文化に触れる中で、通常のコップの大きさにびっくりしたり、一般家庭用の器は、多少雑に扱っても問題ないものであることが大切であること、一般家庭ではなくとも、和食レストランへの需要はまだまだあると感じ、「麟 Lin」は暮らしの器ではなく、「非日常を演出する陶磁器」として位置付けていこうと考えるようになっていきました。
03 : Nippon Quality

本気には本気で応える、
運営者も出展者もいつも以上に
気合の入った展示会に。

「麟 Lin」の販路開拓に奮闘中の最中、2017年の「NIPPON QUALITY」を知った金子さん。案内は受けていたものの、団体での展示と聞くと雑多に並ぶイメージがあったので、この商品ではやめておこうかなと悩んでいました。しかし、中小機構の専門家派遣で知り合った方に出展を勧められ、背中を押されるように応募することに。選ばれた後、出展社全員参加の「勉強会」が開かれると、「正直大変でしたが、勉強会を開催してまで行うということは、中小機構としてもこの取り組みに力が入っているなぁと感じました。なので私もしっかり付き合ってみようと、できるだけ積極的に参加しました」と金子さんは笑いながら当時を振り返ります。結果、アドバイザーや勉強会を通して教わることが多く、展示会前に対策を練ることができました。さらに、いざ展示会場に行くと ブースの造作が想像以上に格好良く、周囲の評判がよかった。この展示会をきっかけに、中国と台湾の蔦屋に、「麟 Lin」を置いていただけることにもなりました。さらにフランスの会社が「SOZAI」という新たな視点で興味を持ってくれるなど、「NIPPON QUALITY」の出展前にこの展示会に期待した、バイヤーとの新たなつながりや、商品作りへの刺激、視点のきっかけを得る良い機会となりました。
04 : The Merit

次世代へとバトンを
つなげる為に取り組む、
自社内の体制作りと産業の未来作り。

周囲から「有田焼400年事業の取り組みで一番変わったのは、金照堂さんだよね」と言われるほど、海外展開を始めて、今まで以上に勢いを増した同社。今年度は、アメリカで開催される8月と2月の「NY NOW」に出展することを決めました。計3回行ってみて、このままアメリカで販路開拓を行うか、新しく「メゾン・エ・オブジェ」などに出すかなどの考えていく予定です。また、今まで以上に海外へと展開していくためにも、英語ができ、海外で働いた経験のある若い営業の方をスカウトしているなど、社内の体制作りを強化中。「海外への取り組みを始めて私が忙しくも楽しそうにしているのを見てか、『英語の先生になる』と言っていた長女が、有田焼の未来に興味を持ち、マーケティングを学ぶ大学への進路を決めてくれたんです。もし今後子供が本当にこの家業を継ぐことになった際、そこからの体制作り、そこからの海外販路開拓では遅い。少しでもネットワークは作っておきたいんです」と金子さんは未来を見据えて話します。この海外展開は、目先の販路拡大だけでなく、いずれ有田焼の国内事業が今よりも低下してしまった時のために、世界を相手にしていくためのノウハウをいち早く習得して次世代に繋げるためでもあり、さらには、海外の可能性を探り挑戦する姿を見て、有田焼って面白そうと思ってくれる方が一人でも産まれたらという狙いもありました。
お話を伺った、「有限会社金照堂」の金子真次さん。
05 : Next Stage

有田焼は工芸ではなく産業。
産業であり続けるためにも、
海外に挑戦していく。

「今までは闇雲に新作を作ってきたけれど、2年やってきて分かることも増えてきました。一旦整理する段階にきています。「麟 Lin」を「Lin Japan」としてブランディングしていくためにも、今から新しく作っていくものと、止めていくもの、整理するもの、新しいものはどういうものを作っていこうかと一旦振り返ってみようと思います」と金子さん。これから海外販路開拓に向けて動く人へは、勉強会などを積極的に利用し、先人たちのノウハウをできるだけ吸収すること、そして出展する前に一度はその出展先の文化に触れてみることがポイントとだと話します。先代の背中を見て、これからの世代は憧れを抱き参入していく。そんな次世代の可能性が海外販路開拓にありました。
取材・文:竹中 あゆみ

企業DATA

有限会社 金照堂 [佐賀県]
創 業:1961年
所在地:佐賀県西松浦郡有田町赤坂有田焼卸団地
代表者:金子真次
有田焼・波佐見焼の陶磁器を扱う卸問屋が、固定概念を捨て窯元や赤絵師、デザイナーとタッグを組んで生まれた、メタリックカラーが特徴の「麟 Lin」シリーズ。洗練されたかっこよさと特徴的な色合いが、いつものテーブルに非日常を添える。積極的に有田焼の可能性を海外へと広げている。